旅63日目 i stand alone
俺の日本一周の中で、特に奇妙な8日間の、最終日。
奈良さんは朝から何やら作業をしている。
なんでも、ヤドカリの庭には十勝石と呼ばれる石がゴロゴロ転がっているそうな。
黒曜石とか、オブシディアンと書くと皆さんもわかるかもしれない。
そう、ロマサガでいうところのデステニィストーンである。
そのデステニィストーン(違う)の原石を削る作業だ。
奈良さんは異国文化や雑貨の方面に興味があるらしく、なぜか石を削る機械を携帯していた。
奈「こんなこともあろうかと」
こんなことって、あるのか・・・?
どうやらできたようだ。
確かに、削り始めよりも石に光沢が出ていて、宝石としての美しさを感じる。
その完成した宝石を、奈良さんが買ってくれないか、と言ってきた。
譲ってくれるんじゃないんかい(密かに期待してた)
まあ、技術に敬意を払うという意味でも、そして何より、俺らの思い出のために、その宝石を買うことにした。
宝石は奈良さんがその場でペンダントにしてくれた。
旅人は良いカメラを持っていることが多い。
旅先の良い風景を、後で見て思い出せるように、持っておくのだろうが、確かに最近、スマホのカメラじゃ物足りなく感じてきていた。俺も少し欲しくなってきた。
Rくんもカメラを持っていて、俺がヤドカリを去る際に、写真を撮ってくれることになった。
Rくん「行きますよー」
カシャ
(`・ω・´)......
(´;ω;`)ブワッ
奈「どうした!?」
(´;ω;`)「だっで、な”ん”じゅ”うにぢも”ひどりだったの”に”、ごんな”ん、ざみ”じずぎる”でじょ”!!!!」
Rくん「カシャ」
(´;ω;`)「撮”ん”な”よ”ぉ”ぉ”お”ぉ”お”!!!」
Rくん「すんません」
この8日間のことが楽しすぎて、そしてこれから1人になることが悲しすぎて、泣いてしまった。
奈良さんが手を差し出してくる。
俺はその手をしっかり握り、奈良さんも普通に握るより強く、固く俺の手を握ってくれた。
その感触は、今でも俺の記憶の中に強く残っている。
オーナー「蛍ぅう〜〜〜、いつでも、ヤドカリに帰ってこいよぉお〜〜」
場の雰囲気が台無しだw
でも湿っぽい空気を、和やかにしてくれた。
ありがとう帯広、そしてさようなら。
また来れるといいな。
その日、国道236号線をひた走る、涙と鼻水と汗でベチャベチャな自転車乗りが目撃されたそうだが、それはまた別の話。
さて、旅を再開することにしよう。
ひとまず南下して、襟裳岬へ行く。
大阪さんが「俺愛国心なかって」と言っていた愛国神社は、俺も特に強い愛国心を持っているわけでは無いのでスルー。
その次の駅の幸福駅。
「愛の国発幸福行き」としてカップルに大人気のデートスポット٩( 'ω' )و
俺はお呼びでないね(☝︎ ՞ਊ ՞)☝︎
男2人で訪れてる人たちがいたんだけど・・・アッー?
程なくして道の駅へ到着。
24時間開放の休憩所があって、寝るのに丁度いい。
近くのスーパーで買い物を済ませ、腹を満たす。名古屋のおっちゃんがコーヒーをくれた。ありがとうございます。
ああ、俺の旅って、こんなんだったな、と短い期間でも旅の中にいるということを忘れさせてくれた人たちの事を、つぶさに思い出す。
小上がりに寝そべり、天井を見上げる。
1人で寝ることが、こんなに寂しいと思わなかった。
こんな風に感じるなら、誰とも出会わなければ良かった。
決してそんな風に思うことはないが、何もない空間を、ひどく寂しく感じるのは事実だ。
横になると、胸になにか硬い感触があった。
奈良さんのペンダントだ。
寝るのには少し邪魔だが、今日は首にかけたまま寝ることにしよう。
俺は確かに、ここに1人でいる。
だが、俺はもう1人じゃない。
ライダーハウスヤドカリの家〜R236〜道の駅コスモール大樹
本日の記録
走行距離:62km
出費:2556円
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