旅69日目 鈍く光る宝石
そう、俺の旅は俺にしかできない。
俺がそうやって道を進み、あそこで折れ曲がっていったからこそ、あの人やこの人、その人に出会った。
全ては俺がつくった、選択したものだったんだ。
だから、今までの旅路を否定することはできない。
彼らとの出会いを否定することになってしまうからな。
・・・そうでも思わなきゃ、やってられないだろう?
朝起きると、山梨の彼はいなかった。
おいコラふざけんなこの野郎!挨拶もせず出て行きやがって!寂しいだろうが!
別れの挨拶くらいさせろよ。
感傷に浸る暇もなく、昨夜遅くまで酒飲んでテレビ見てたジジイと話をする。
俺、基本的に相手に失礼のないようにするけど、このジジイはジジイと呼んでも失礼じゃない気がする。
ーーーーーーー以下、老害批判と愚痴ーーーーーーー
なにがあったかというと、
「昨晩はよく眠れましたか?いや、幸せそうにイビキをかいていたんで。イヤミじゃないんですよ、ハハハ」とか、
「最近の若者は根性が足りん。上から言ってるんじゃなくてな」
という話を戦後GHQがどうたら、戦後教育がどうたら、俺が新潟出身と知ると、関東の防衛範囲が新潟に含まれてどうたら、長〜々とご高説を垂れてくださったからだ。
年齢聞いたら団塊だった。
で、今の話が、若者に根性が無いというのと何か関係が?と問うと、
「え?」
と耳をこちらに向ける。
難聴かよ!
ジジイは大した話もできないくせに、安価なライダーハウスで若者に説教すんな!
若者に何か話したくらいで気持ちよくなりたいだけの老害は去れ!
しかも車で来て路駐すんな!
金あるんならホテルか民宿行けよ・・・。
クリオネが50歳以上連泊禁止のルール設けるのも頷ける。
百歩譲って泊まるなとは、同じ旅人どうしだから言えないが、せめて、そうせめて若者の貴重な時間を邪魔しないでいてほしい。
ーーーーーーー以上、老害批判と愚痴ーーーーーーー
あ、年とってもちゃんとしてる旅人なら別に構わんですよ。
お目汚し失礼!
陰口や悪態は見ていて気持ちのいいもんじゃないから、あんまり表に出さない方がいいのはわかる。
でも書きたかった!
この日は引き続き函館観光。
そしてセコマ。ラストセコマ。
看板が 何だか神々しく見える。
ラストペペロン。
もう君ともお別れね。寂しいわ。
ラストカツゲン。
もう会えないのね。さようなら。
セコマを後にして、噂のラッキーピエロへ。
休日だからか、外国人観光客がたくさんいた。
店員が流暢な英語話せるんだね。すげーや。
人気no.1チャイニーズチキンバーガーセット。
これが函館ちほー限定というのは日本の大きな損失だと思う。
ぜひセコマとともに全国進出するべき。
セコマも行ったのに・・・食い過ぎた。ゲェ。
腹がはちきれそうになりつつ五稜郭へ。
五稜郭タワーなんつーもんが建ってる。
景観壊さねえのかな。
2km程度の外郭。
途中砂利っぽくなるが、静かでサイクリングには程よい。
中に入って、自転車を押しつつ歩く。
ふーん、へーん、ほーん・・・。
よくわからん。
昔、会津に修学旅行行った記憶があるが、誠の文字が入った木刀を買ったような・・・。よくあるやつね。
戊辰戦争より、新選組がどうした、くらいしか興味が無かったことが判明した。
またもセイコマに寄る。どんだけ名残惜しいんだ。
ラストはこれ、山わさび塩ラーメン。
初めて買った際、店員から「かなり辛いですよ?」と注意されたが、食って見て本当に衝撃的な辛さだった。
俺は好きだよ!
みんな津軽海峡フェリーをつかうみたいだけど、より安い青函フェリーにした。
名残惜しくも函館を出立。
フェリーに乗って、サイドバッグを整理していると、底の方で手に硬い感触があった。
俺はこの感触を覚えている。
岩内のばあちゃんがくれた黒飴だ。
丁寧にラッピングを外し、中身をつまんで照明にかざす。黒曜石が放つ鈍い光にも似たそれは、とても神々しく見えた。
飴を頬張り、今まで出会った人たちのことを思い出す。
寿都の神戸マダム、岩内のばあちゃん、苫前の管理人のおじさん、日本縦断香港人L、猿払で会ったマダム、Gくんことがっきー、ドイツ人DB、関西のライダー3人組、松戸のおっちゃん、ヤドカリのオーナーやライダーチャリダー、Mr.bicycleのオーナー。
本当にたくさんの人と出会えた。北海道は素晴らしいところだった。
北海道での出来事を確かめるように、甘い思い出を口の中で転がしていると、少しずつ溶けてゆき、やがて消えていった。
寝よう。起きたら本州だ。
本日の記録
走行距離:22km
出費:4540円